産総研、ロボット基盤モデルの研究開発を本格始動 ― 実世界の困難作業の自動化を目指す新たな取り組み

2025年1月24日、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)は、製造・物流・小売業界や家庭・オフィス環境での自動化を促進するため、ロボット基盤モデルの研究開発を開始したことを発表しました。 この取り組みは、少子高齢化による労働人口減少に対応し、これまで自動化が困難だった複雑な作業のロボット化を目指すものです。

背景と課題

近年、AI技術とロボティクス技術の進展により、ロボットの柔軟性や汎用性が飛躍的に向上しています。一方で、柔らかい物体や透明な物体を扱う作業、多種多様な物体を処理する業務は、従来のティーチング手法やプログラミングでは効率的な自動化が難しいという課題がありました。

産総研は、これらの課題解決のため、大量の実世界データから学習するロボット基盤モデルを開発し、社会や産業現場でのロボットの実用性を向上させることを目指しています。

研究開発のポイント

これまで、産総研では視覚と力覚を統合的に扱うAIモデルや、人間の認知発達を模した動作基盤学習、シミュレーションデータを用いた学習データ生成技術など、ロボット基盤モデルの構築に必要な技術を発表してきました。また、臨海副都心センターに設置した模擬工場やコンビニ環境で、双腕マニピュレータ「ALOHA」や産業用ロボットを活用し、実世界の作業データ収集も進めています。

さらに、模倣学習手法の検証を目的としたソフトウェアフレームワーク「RoboManipBaselines」も開発し、オープンソースとして公開しています。このフレームワークは、多様な環境での学習やテストに活用可能で、研究者や企業との連携を促進するツールとして期待されています。

社会実装と産業界との連携

産総研は、ロボット基盤モデルの社会実装を加速するため、ロボットユーザーやメーカー、システムインテグレーターと連携し、門戸を開いた共同研究体制を構築しています。具体的には、事業者が自社の作業課題をテストできる場を提供したり、産総研の技術者と連携して問題解決を図る取り組みを推進します。また、得られたデータは秘匿化処理を施したうえで共有し、基盤モデルの汎用性向上に役立てる方針です。

今後の展望

今回の研究開発は、日本が誇る産業用ロボット技術の強みを活かし、少子高齢化に伴う労働力不足や複雑な作業の自動化ニーズに応えるものです。産総研は、ロボット基盤モデルを中核技術として位置付け、これを基にした社会・産業の変革を目指します。

今後も、実世界データの収集とAI学習の最適化を進め、国内外での幅広いロボット導入を支援するインテグレーション技術の開発にも注力していく予定です。

産総研のこの取り組みは、産業界全体の効率化を図るとともに、日本のロボット技術の国際競争力をさらに高めることが期待されます。

引用

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

AI・DX・LowCodeなど企業に役立つ情報を発信しています。

目次