「n8n(エヌエヌ)」はノーコードで高度なワークフローを構築でき、AIを含む3rdパーティツールとも連携可能な自動化プラットフォームです。
本記事では、n8nの概要から特徴、料金、具体的な使い方、安全性まで、最新情報を交えて詳しく解説します。
概要
n8nは、オープンソース型の自動化プラットフォームであり、ノーコード/ローコードで複雑なワークフローや業務プロセスの自動化を実現します。
世界中の開発者・企業に利用されており、GitHubのスター数は10万件を超えるなど、非常に大きなコミュニティを持っています。
n8nの主な特徴と機能
主な特徴と機能は次のとおりです。
1.ノーコード/ローコード対応
ドラッグ&ドロップのGUIとJavaScriptコード拡張を組み合わせて、専門知識がなくても複雑な自動化フローを構築可能。
2.豊富な統合ノード
Google Workspace、Slack、Notion、Salesforce、各種データベースやREST APIなど、350〜500以上のサービスと連携できます。
3.AIとの連携強化
ChatGPTや他の生成AIモデルをネイティブに組み込めるため、AIによる自動応答・コンテンツ生成・データ分析など先端的な活用も簡単です。
4.セルフホスト&クラウド両対応
自社サーバーやクラウド(公式クラウドは月額20ドル台〜)で柔軟に運用できます。セルフホストは無料、エンタープライズ機能は有料で提供。
5.多彩なトリガー・制御機能
Webhook、スケジューラー(cron)、条件分岐、エラー処理、ループ、ファイル監視など、高度な業務フローも対応。
6.活発なコミュニティとエコシステム
公式フォーラム、Discord、GitHubなどで世界中のユーザーや開発者が活発に情報共有・開発・プラグイン公開を行っています。
n8nは「コストを抑えて柔軟な自動化を行いたい」「自社運用でセキュリティも確保したい」という企業や個人に最適な次世代オートメーション基盤です。
n8nの料金
n8nにはセルフホストとクラウド版があります。
セルフホストは無制限で利用可能。クラウドは月20ドル台からのスタートプランで、AIノード利用や実行回数も調整可能です。
プラン | 月額料金(年払いの場合、€ベース) | 月間実行数 | ユーザー/ワークフロー数 | 主な機能 |
---|---|---|---|---|
オープンソース(Community Edition) | 無料 | 無制限 | 無制限 | セルフホスト、自主管理。ソースコード公開。 |
Starter | 20 €/月(約21〜24 USD) | 2,500 実行 | 無制限 | 共有プロジェクト 1つ、同時実行 5、フォーラムサポート。 |
Pro | 50 €/月(約54〜60 USD) | 10,000 実行 | 無制限 | 共有プロジェクト 3つ、同時実行 20、ワークフロー履歴・検索、管理者ロールなど。 |
Business | 667 €/月(約730 USD) | 40,000 実行 | 無制限 | SSO/SAML、複数環境、Git連携、インサイト 30日分、エンタープライズ向け管理機能。 |
Enterprise | 個別見積 | カスタム | 無制限 | SLA、監査ログ、専用サポート、200以上の同時実行、外部Secrets連携、無制限プロジェクト。 |
n8nの活用事例
n8nの主な活用ケースとして、公式は以下のような事例を紹介しています。
1. IT オペレーションの自動化
- エラー検知と通知:ある企業では、複数のワークフローを組み合わせ、エラー発生時に自動でSlackやDiscordに通知される監視フローを構築しています。
- インシデントレポート生成:日次・月次レポートを自動で生成し、社内配布するワークフローを実装しています。
2. レポート作成とデータ統合
- 異なる形式のデータを統合:AirtableやGoogle Sheetsなど異なるデータソースを統合し、CSVなどにエクスポートしてメール通知するといった一連の処理を自動化。
- 定期レポート配信:売上データを取りまとめ、フォーマット化して定期的に送信する流れも多くのユーザーに活用されています。
3. AIチャットエージェント/AI活用
- AIエージェント構築:ChatGPTなどのLLMと組み合わせて、チャットボットの自動応答やAIエージェントの構築が可能です。ノードライブラリに基づくテンプレートも提供されています。
4. CRM/リード管理・マーケティング
- リード情報の連携:HubSpotやSalesforce、Typeform、Clearbitなどから取得したリード情報を自動でCRMに入力し、Slackやメールで通知するフローが公式で紹介されています。
- キャンペーン管理:マーケティングキャンペーンやメール配信をトリガー管理し、自動化することで運用効率を向上させています。
5. セキュリティ運用(SecOps)
- インシデント情報の自動収集・分析:メールやSlackで通知されたセキュリティイベントを収集・分析し、自動でチケット化したり脅威分析を行う活用が可能です。
6. 組み込み型自動化(Embedded Automation)
- パートナー向けサービス提供:n8n Embed機能を活用し、自社サービスにカスタム自動化機能を「組み込み型」で提供する事例が公式でも紹介されています。
n8nの利用方法
今回はセルフホスト版の解説をします。
事前準備
今回はWindows環境で検証しています、MacやLinuxなどの他のOSでは動作手順が異なります。
- Docker Desktop for Windows をインストール(バックエンドは WSL2 を有効化)
- 初回起動時に Resources → WSL integration をオン
- Windows ファイアウォールの許可ダイアログは Allow
- 既に 5678 ポートを使うアプリがある場合は、後述の
-p
を変更
セルフホスト版のDocker導入
1.作業用フォルダを作成(PowerShell):
mkdir n8n; cd n8n
2.docker-compose.yml(または compose.yaml)を作成:
version: "3.8"
services:
n8n:
image: n8nio/n8n:latest
ports:
- "5678:5678"
environment:
- GENERIC_TIMEZONE=Asia/Tokyo
- TZ=Asia/Tokyo
# ローカルで試すだけなら下記2つは省略可(外部公開時に設定)
- N8N_HOST=localhost
- N8N_PROTOCOL=http
volumes:
- ./.n8n:/home/node/.n8n
# 再起動ポリシー(PC再起動後も自動起動させたい場合)
restart: unless-stopped
3.起動:
docker compose up -d
初期設定
ブラウザでアクセス(例:http://localhost:5678)し、初期セットアップを完了します。

追加でメールアドレスを登録することで、一部機能を無料でアンロックすることができます。
※必須ではありません。

利用開始手順
今回は既存のテンプレートを利用して天気やニュース情報をチャット →(必要なら)ツールを呼ぶ → 回答」を一通り体験できるAIエージェントを作成したいと思います。
1.画面左下の「Teamplates」を選択。

2.「Build your first AI agent」を選択。

次のようにプロジェクトが追加されます。

3.次に利用するLLM(Gemini)の設定を行っていきます。
事前にGoogleAIStudioからAPIキーを取得してください。

Models ノード(Gマーク等)を選択し、APIキーを設定。

以上で設定は完了です。
動作確認
では設定後、Open chat から質問してみます。
今回は基本的な天気とNEWSの情報をそれぞれ質問しました。
プロンプト:
パリの天気は?
出力結果:

プロンプト:
最新のテックニュースは?
出力結果:

公開方法
1.Chatトリガーを開く
- キャンバス中央左の吹き出しアイコンのノード(
Example Chat
)を選択。
2.公開をオンにする
- ノード右側パネルで 「Make chat publicly available(公開チャット)」 を ON。

- すぐ下に Public chat URL が表示されるので Copy。
2.ワークフローを有効化
- 右上の Active が ON(緑)になっていることを確認

そのURLをブラウザで開いて会話できるか確認。

※外部公開するにはドメイン設定またはWebアプリ版の利用が必要です。
おわりに
n8nは、低コストで始められ、必要に応じてコードや外部サービス連携まで拡張できる“実務向け”オートメーション基盤です。
まずはテンプレートで動く体験を作り、小さな定型作業の自動化から効果を確認しましょう。効果が見えたら、認証情報の管理やバックアップ、外部公開時のTLS/認証など運用面を整えて段階的に本番適用へ。
チーム導入や他システム連携を重ねるほど、業務全体の生産性と再現性が着実に高まります。
