【AIエージェント開発を効率化】OpenAI AgentKitを使ってみた

目次

概要

OpenAIは2025年10月6日、開発者向けカンファレンス「DevDay 2025」で「AgentKit(エージェントキット)」を発表しました。
AgentKitは、エージェントの設計・埋め込み・評価を一体化する開発者向けツール群です。ビジュアルでワークフローを設計できるAgent Builder、チャットUIを簡単に埋め込めるChatKit、そして評価・最適化を支援するEvals(Datasets、Trace grading、Prompt optimizer等)を主要コンポーネントとして提供します。
加えて、企業向けのConnector RegistryやオープンソースのGuardrailsも利用可能です。料金は基本的にAPIの標準課金に含まれており、ChatKitとEvalsは一般提供、Agent Builderはベータ版として段階的に展開されています。

主な特徴と機能

AgentKitの特徴と機能は以下のようになります。

  • Agent Builder:ドラッグ&ドロップのビジュアルキャンバスでワークフローを構築・バージョン管理。テンプレートから開始でき、プレビューやインライン評価も可能です。
  • ChatKit:作成したワークフローを自社プロダクトに埋め込むチャットUI。テーマやブランドに合わせたカスタマイズに対応します。
  • Agents SDK(Python/TypeScript):コードでツール統合・ハンドオフ・マルチエージェントを表現できる軽量SDK。
  • コネクタとMCP(Model Context Protocol):Google DriveやDropbox等のコネクタ、外部MCPサーバー経由で安全にデータ・ツールへ接続。
  • Evals強化:Datasets、Trace grading、外部モデル評価、プロンプト自動最適化で本番品質に近い評価ループを構築。
  • セーフティ:ツール承認(user approval)やGuardrailsでPII保護・脱獄対策を実装。

提供形態・料金

AgentKitは利用するツールによってそれぞれ以下のように料金が発生します。

項目提供形態料金の目安・条件
AgentKit全体Agent Builder/ChatKit/EvalsAPI標準料金に含まれる(Agent Builderはベータ、ChatKit・EvalsはGA)。
AgentKitの課金開始ChatKitアップロード等2025/11/01 課金開始。ファイル/画像アップロードは月1GB無料、超過は $0.10/GB-日。自前ホストのChatKitはモデルのトークン課金のみ。
Code Interpreter組み込みツール$0.03/セッション。
File Search(ストレージ)ベクターストア$0.10/GB・日(1GB無料)。
File Search(ツールコール)Responses API限定$2.50/1,000回。
Web Search(ツールコール)モデル別プレビュー含む$10〜$25/1,000回(モデルにより異なる)。
モデル利用料Responses/Realtime等各モデルのトークン単価に準拠(別表)。

内容は随時更新されるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。

実際の利用方法

AgentKit

今回はお問い合わせから、以下のMarkdown形式のファイルの内容を参照して回答する、最小構成のFAQエージェントを作成します。

Markdown

question,answer,tags,source_url,last_updated
"返品はできますか?","商品到着後14日以内で、未開封・未使用に限り返品可能です。返送送料はお客様ご負担となります。手順: マイページ > 注文履歴 > 対象注文 > 返品申請 を実施してください。","返品,返金,キャンセル","https://example.com/help/returns","2025-09-01"
"配送料はいくらですか?","全国一律500円。5,000円以上のご注文で送料無料です。沖縄・離島は追加料金(+700円)がかかります。","送料,配送,料金","https://example.com/help/shipping","2025-08-20"
"支払い方法は?","クレジットカード(VISA/Master/JCB/Amex)、銀行振込、コンビニ決済、PayPayに対応しています。","支払い,クレジット,コンビニ","https://example.com/help/payments","2025-07-15"
"アカウントのパスワードを忘れました","ログイン画面の「パスワードをお忘れですか?」からリセットできます。メールのリンクは30分で失効します。","アカウント,ログイン,パスワード","https://example.com/help/account-password","2025-06-10"
"領収書の発行方法を教えてください","マイページ > 注文履歴 > 対象注文 > 「領収書を表示」からPDFをダウンロードできます。","領収書,請求書,会計","https://example.com/help/receipt","2025-07-01"

作成手順

1.OpenAIのAgent Builderのサイトにアクセスし、ログイン後「+ Create」を選択。

2.以下の画面でノードを選択し構築します。
それぞれのノードの役割は以下のようになります。

・Start:入力の起点。フォーム/チャット/アクションから渡ってくる初期ペイロードを定義。出力は下流に流れます(型付き)。
・Agent(画像の “My agent”):モデル・指示(system/behavior)・ツール使用許可(File search, MCPなど)・メモリ/ステート読み書き等を担う中核ノード。
・End:最終レスポンスや返却データを確定させる終端。
・File search:社内/外部のドキュメント検索で回答を補強するツール・ノード。
・Guardrails:PIIマスキング、ジェイルブレイク検知など安全策を差し込むノード/ライブラリ連携。
・MCP:Model Context Protocol で外部システムやコネクタへツール接続。
・If/else・While:分岐/反復の制御フローノード。
・User approval:重要操作の前に人間の承認を要求するガード。
・Transform・Set state:中間データの整形、ステート(メモリ)への保存/更新。

3.My agentを選択して、以下のように設定します。

  • Name:FAQ
  • Instructions:
あなたは社内FAQボットです。
CSVを参照して、日本語で簡潔に回答し、URLを添えてください。
CSVに情報がない場合は「回答できません」と伝えてください。

4.次に参照するファイルを設定します。
Toolsから「File search」を選択します。

最初のMarkdownファイルをアップロードします。

Markdown

question,answer,tags,source_url,last_updated
"返品はできますか?","商品到着後14日以内で、未開封・未使用に限り返品可能です。返送送料はお客様ご負担となります。手順: マイページ > 注文履歴 > 対象注文 > 返品申請 を実施してください。","返品,返金,キャンセル","https://example.com/help/returns","2025-09-01"
"配送料はいくらですか?","全国一律500円。5,000円以上のご注文で送料無料です。沖縄・離島は追加料金(+700円)がかかります。","送料,配送,料金","https://example.com/help/shipping","2025-08-20"
"支払い方法は?","クレジットカード(VISA/Master/JCB/Amex)、銀行振込、コンビニ決済、PayPayに対応しています。","支払い,クレジット,コンビニ","https://example.com/help/payments","2025-07-15"
"アカウントのパスワードを忘れました","ログイン画面の「パスワードをお忘れですか?」からリセットできます。メールのリンクは30分で失効します。","アカウント,ログイン,パスワード","https://example.com/help/account-password","2025-06-10"
"領収書の発行方法を教えてください","マイページ > 注文履歴 > 対象注文 > 「領収書を表示」からPDFをダウンロードできます。","領収書,請求書,会計","https://example.com/help/receipt","2025-07-01"

動作確認

1.「Preview」を選択します。

2.チャットに質問を入力します。
今回は送料について尋ねたところ、ファイルを参照して回答してくれました。

ChatKit

今回はWindows環境で検証しています、また事前にnode.jsのインストールが必要になります。

事前準備

先ほど作成した、Agentをプロジェクトに組み込みます。

  1. Agent Builderで公開し、発行されたワークフローIDを控える。

2.OpenAIのAPIキーを取得

次の記事を参考にAPIキーを取得してください。

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ChatKit Starter Template を試す

ChatKit Starter Templateは、Agent Builderで公開(Publish)したワークフローを、最小構成のNext.jsアプリに直接接続して試せるOpenAI公式の雛形です。

インストール&設定手順

  1. クローン&インストール
git clone https://github.com/openai/openai-chatkit-starter-app
cd openai-chatkit-starter-app
npm install
  1. 環境変数を用意
cp .env.example .env.local
  1. .env.local を編集(先ほど取得したAPIキーと Workflow IDを指定)
OPENAI_API_KEY=sk-proj-...
NEXT_PUBLIC_CHATKIT_WORKFLOW_ID=wf_...

※sk-proj-…とwf_…は実際に取得したキーに置き換えてください。

動作確認

1.実行

npm run dev

ブラウザで http://localhost:3000 を開くと、ChatKitのチャットUIが表示されます。
ここで 送料の質問など、Agent Builder で用意した CSV の内容に基づく質問を入れると、File search を参照した回答+出典URLが返って来れば成功です。

おわりに

本記事では、OpenAIのAgentKitを使用したFAQエージェントの作成から、ChatKit Starter Templateによる実装までを解説しました。
Agent Builderのビジュアルな操作とChatKitの埋め込み機能により、従来は数週間かかっていたエージェント開発を数時間で完成させることができます。
今回はシンプルなFAQ対応を例にしましたが、File searchやMCP、Guardrailsなどを組み合わせることで、カスタマーサポート、社内ナレッジアシスタント、業務自動化など、より高度なユースケースにも対応可能です。
ぜひ自社の業務に合わせてカスタマイズし、AgentKitの可能性を探ってみてください。

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この記事を書いた人

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