【国産生成AI:第3期】経済産業省、AI開発プロジェクト「GENIAC」に採択された24社の最先端取り組みを紹介

今回は経済産業省が国内の生成AI開発を加速させるプロジェクト「GENIAC:第3期」に採択された研究機関・企業24社の取り組みについて紹介します。
AIの社会実装や産業応用に直結する最先端プロジェクトが並び、今後の日本のAIエコシステムを牽引することが期待されています。

目次

「第3期」GENIACに採択されたプロジェクト24選

ロングコンテキスト対応基盤モデルとAIエージェントによる業務自動化の推進

株式会社ABEJAは、長文処理性能が高くローカル環境でも動作可能な日本語LLMを開発。プランニングやToolUseなど複雑なタスクにも対応できる業務特化型AIエージェントの実現を目指します。
実際の企業データを用いた実証にも取り組み、ABEJA Platformを通じた社会実装や成果物の公開にも力を入れています。
これにより、ビジネス現場のミッションクリティカルな課題解決と、次世代AIエージェントの普及を加速させます。

時空間MoEによる動画生成AI基盤モデルの開発とプラットフォーム社会実装

株式会社AIdeaLabは、時空間MoE技術を用いた小規模から大規模までの動画生成AI基盤モデルを開発しています。
動画生成AIプラットフォームの提供を通じて、幅広いユーザーへのサービス展開やAPI提供を推進。
ソースコードや開発ノウハウも公開し、生成物の著作権リスクにも配慮した社会実装を進めています。
これにより、動画生成AIの利用ハードルを下げ、さまざまな現場での活用拡大を目指します。

一貫性のある日本語Full-Duplex-SpeechマルチモーダルLLMの開発

AI inside株式会社は、流暢な日本語音声対話と高い業務対応力を持つ小型マルチモーダルLLMを開発しています。
画像・音声・言語を統合し、DX Suiteとの連携や新AIエージェントへの組み込みを通じて、幅広いビジネス課題の解決を目指します。
BuddyEvalベンチマークや評価データも公開し、AIの業務現場への定着と普及を支えます。
これにより、誰でも直感的に扱えるAI音声対話サービスの実現が期待されます。

PLC制御におけるラダープログラム生成用大規模言語モデルの研究開発

Airion株式会社は、工場制御設計の工数削減を目指し、ラダープログラム自動生成に特化した30B規模のLLMを開発しています。
実機で使われる制御データを追加学習に活用し、現場設計者による実証実験を通じて高精度な自動化を実現。
ベンチマークや評価指標、実証結果も公開し、設備メーカーへのパッケージ提供で幅広い普及を目指します。
これにより、製造現場の効率化とAI活用による設計革新が期待されています。

リモートセンシング用視覚言語モデルの研究開発

Degas株式会社は、マルチスペクトル画像に対応した4Bパラメータの衛星画像向け視覚言語モデル(VLM)を開発しています。
地理空間基盤データと大規模言語モデルを統合し、農業・防災・インフラ分野などで活用可能な高精度AIを実現。
国際機関との実証やアプリケーション展開も進め、モデルやソースコード、検証ノウハウの一部を公開しています。
これにより、リモートセンシング分野でのAI活用と技術コミュニティへの貢献が期待されています。

外科手術支援のための視覚・言語統合型AI基盤モデルの開発

Direava株式会社は、手術中の安全性や外科医の意思決定を支援するため、日本語外科手術特化の7B規模マルチモーダルAIモデルを開発しています。
独自構築の高品質データで学習し、自社の手術ナビゲーション製品への組み込みや外部医療機関での実証も推進。
医療AI規制に則った安全性・信頼性評価や解剖部位アノテーションにも取り組み、一部の開発ノウハウを公表しています。
これにより、臨床現場で活用可能な次世代AI手術支援の実現が期待されています。

大規模データを用いたリアルタイム音声基盤モデルの精度・機能向上による実用化加速

株式会社Kotoba Technologies Japanは、7カ国語対応・8B規模の音声基盤モデルを200万時間分の多様な音声データで学習しています。
リアルタイム通訳やASR、音声合成などの下流タスクで高性能を実現し、iOSアプリや今後展開予定のDesktopアプリ・APIへ実装。
さらに、モデルの蒸留による軽量化でノートPCやモバイル端末でのエッジ運用にも対応し、10万人以上のユーザー利用を目指します。
これにより、多言語・リアルタイム音声AIの社会実装が一気に加速します。

Factcheck RMとエージェントの開発研究

NABLAS株式会社は、ファクトチェックやハルシネーション対策に特化した強力な報酬モデルとファクトチェックエージェントを開発しています。
日本の高度な課題に対応するため、ソースの真偽や信頼度を自動で判定・分類できるモデルやツールを構築。
報道機関と連携した実証・評価やベンチマーク公開を通じて、サービスの品質改善と業界全体の底上げを目指します。
評価データやノウハウの公開も行い、ファクトチェック技術の幅広い社会実装に貢献しています。

自律駆動R&DのためのAIエージェントアダプターの研究開発

株式会社NexaScienceは、マルチAIエージェント間のプロンプト調整を自律的に行える「AIエージェントアダプター基盤モデル」を開発しています。
小規模パラメータかつ基盤モデル非依存設計で、ゼロショットタスク転移やエージェント間通信の最適化も実現。
自社SaaSやOSS「AIRAS」への統合を進め、研究・知財・事業開発分野での自律AI導入支援やカスタマイズにも対応します。
ソースコードや開発ノウハウも公開し、AIエージェント活用の裾野拡大に貢献します。

要約タスク等を目標に出力形式への追従能力を高めたLLMの開発・データセット構築

Nishika株式会社は、RAM8GB以下のPCでも動作する軽量LLMを開発し、箇条書きや段落、テンプレートなど多様な出力形式への高い追従精度を実現しています。
独自の日本語形式制御ベンチマークと自動評価パイプラインも整備し、官公庁や民間での議事録サービス「SecureMemo」への導入で実運用性を検証。
LoRAによる現場データでの迅速な再学習や、データセット・ベンチマークの一部公開も行い、業務現場でのカスタマイズや評価にも貢献します。
これにより、多様な日本語文書の自動要約・出力フォーマット化が身近になります。

openBIMにおけるBIM情報要件の生成基盤モデルの研究開発

ONESTRUCTION株式会社は、建設業界のDX推進に向けて、BIMデータの国際標準「openBIM®」に準拠した情報要件(IDS)自動生成モデルを開発しています。
専門家の知識を学習したAIが、自然言語のプロジェクト要件からXML形式のIDSを自動生成し、中小企業も含め幅広い建設会社が効率的に標準データ運用できる環境を整備。
自社サービスへの組み込みやAPI提供、評価データやノウハウの公開も推進し、建設業全体の生産性向上を目指します。
これにより、BIMの現場実装とグローバル対応が一気に進むことが期待されます。

自律稼働デバイスに向けた高精度軽量VLMの開発

株式会社Preferred Networksは、ローカルやエッジ環境での運用を想定し、高精度かつ軽量に動作する視覚言語モデル(VLM)を開発しています。
PLAMo 2や既存VLMを活用した合成データで学習し、Pruningや蒸留による小型化と高性能を両立。
ドローンや監視カメラをはじめ、さまざまな業務現場での実証も進められています。
ベースモデルの公開や開発ノウハウの継続共有にも力を入れ、物理世界へのAI適用を加速させます。

視覚接地した文書特化型 視覚言語基盤モデルの構築

Sansan株式会社は、文書画像のレイアウトや文字位置を細かく把握できる新しい視覚言語モデル「Cello」を開発しています。
位置情報を出力する特殊トークンを導入し、VQA形式で精度の高い補正やデータ化を実現。
既存モデル「Viola」と比べて工程数を大幅に削減し、自社データ化システムや導入企業への付加価値提供を目指します。
論文やコードも公開予定で、効率的な事前学習ノウハウの社会共有も推進しています。

長尺コンテクストを理解する大規模映像基盤モデルの開発

SDio株式会社は、数時間に及ぶ長尺映像データの文脈や因果関係を深く理解できる7B~13B規模の大規模映像基盤モデル(LVM)を開発しています。
階層的メモリやMoE技術を組み合わせ、高いコスト効率と日本語映像への最適化を両立。
既存のAI映像解析プラットフォームの精度向上や、業界特化ソリューションの迅速な展開も目指します。
APIやツール、研究知見の公開を通じて国内AIコミュニティへの貢献も推進しています。

AIによる分子の発明を実現させるタンパク質–リガンド分子相互作用基盤モデルの開発

SyntheticGestalt株式会社は、タンパク質とリガンド分子の相互作用を深層学習で理解し、創薬など多分野で活用できる基盤モデル「Gestalt Interaction」を開発しています。
さらに強化学習を用いた分子生成機能「Synthetic Ligand」を加え、条件タンパクに応じて新規化合物の設計と最適化が可能に。
開発したモデルはGoogle Cloud Marketplace等で提供され、ユーザー向けのWebアプリ化にも対応。
開発手法は特許申請後に論文発表も予定しており、分子設計イノベーションの加速が期待されます。

完全自動運転に向けた車載可能なフィジカル基盤モデルの開発

Turing株式会社は、映像・センサー・制御信号を統合的に理解し、現実世界の状況変化や移動体の動きを予測できる100B規模のフィジカル基盤モデルを開発しています。
マルチモーダル生成AIを活用し、視覚・言語・行動を一体で処理する新アーキテクチャも構築。
自動車メーカーやサプライヤーとの技術実証を進め、将来的な完全自動運転システムやADAS製品への応用、販売を目指します。
基盤技術の一部は他分野の共通基盤としても公開予定で、幅広い産業利用が期待されています。

建築現場の施工管理を自動化するAI基盤モデルの開発

Zen Intelligence株式会社は、建築現場の空間・物体・意味データを時系列で統合するマルチモーダルデータセットを構築し、現場監督レベルの認識・判断・アドバイスができる基盤モデル(最大7B LVLM)を開発しています。
実際の現場導入やzenshot搭載を通じて、各企業へのカスタマイズ・コンサルティング展開も推進。
モデルのアーキテクチャやデータフォーマット、課題設定や工夫点なども一部公開予定です。
これにより、建設業の施工管理業務の高度な自動化が期待されています。

低分子化合物の生物活性を世界最高精度で予測する、創薬生成AI基盤モデルの研究開発

アリヴェクシス株式会社は、独自技術ModBindを活用し、低分子化合物と創薬標的の結合強度を高精度かつ効率的に予測する創薬生成AI基盤モデルを開発しています。
大規模な合成化合物生成と能動学習プロセスを統合し、世界最高精度の創薬AIの構築を目指します。
事業終了後は成果の論文発表やモデルのライセンス提供、生成化合物のライセンス展開も推進。
ベンチマークやオラクルデータの公開も行い、AI創薬の新たな可能性を切り拓きます。

日本のカスタマーサポートのためのオムニモーダルエージェントモデルの開発

カラクリ株式会社は、日本のカスタマーサポートに特化したオムニモーダルエージェントモデルを開発しています。
日本語LLMに画像・音声・動画の統合理解能力を付与し、非エンジニアでもAIに業務委任ができる仕組みを実現。
大規模学習と強化学習でGPT-4o等と同等レベルの性能を目指し、モデル・ベンチマーク・ソースコードをオープン公開します。
これにより、現場実証やノウハウ共有を通じてカスタマーサポート領域での生成AI活用を大きく加速します。

暗黙知の抽出を目指した業界特化のドキュメント読解基盤モデルの開発

ストックマーク株式会社は、製造業などを対象に、情報密度と専門性が高い複雑なドキュメント読解が可能な30B規模の視覚・言語マルチモーダル基盤モデルを開発しています。
一般的なドキュメント読解モデルと、製造業特化の視覚言語モデルの2本立てで世界最高性能を追求。
PaaS化やAI型情報収集・検索SaaSサービスとして既存サービスへの組み込み・他社提供も進行中です。
一部成果モデルや学習ノウハウも公開し、業界を越えたナレッジ活用を加速します。

中規模(10B-40B)の業界・タスク特化型LLMの研究開発

株式会社野村総合研究所は、10B〜40B規模のオープンLLMを複数活用し、金融業界(証券・保険など)を題材とした業界・タスク特化型LLMの構築手法を確立しています。
高品質な専門知識テキストコーパスと合成教師データによるファインチューニングで、高精度かつ省資源な特化モデルを実現。
個社向けのモデル構築・導入やAIエージェントからの活用も想定し、論文発表・学会発表による知見共有も推進しています。
まずは金融分野から、様々な業界への展開が期待されています。

SIP-jmed-LLMをベースとした医療用途特化LLMの開発

株式会社プレシジョンは、SIP-jmed-llm-jp(13B, 8×13B, 172B)を中核とする医療特化LLM群を開発し、医療文書自動校正や個人情報匿名化など5タスクに最適化されたマルチモデルを構築しています。
700施設超で導入を目指し、医師の文書作成時間や患者待機時間を大幅に短縮。
透明性の高い医療テキスト生成と日本の現場に即した課題解決で、LLMによる医療現場の効率化と医療品質の持続向上を実現します。
モデルやサンプルコードも公開され、今後の医療AI開発の基盤となることが期待されています。

長期記憶メカニズムと対話型学習を融合した最先端の生成AI基盤モデルの研究開発

楽天グループ株式会社は、Factorization Memoryを中核としたロングコンテキスト処理とパーソナライズ応答を両立する先端生成AI基盤モデルを開発しています。
長期・高精細なユーザ行動履歴の効率的活用で、検索・レコメンドや購買体験の最適化、AIエージェント戦略も加速。
モデルアーキテクチャや評価手法はオープン化し、国内最大規模のサービス実装や外部企業への展開も見据えます。
継続的な改善体制の構築にも注力し、AI活用の高度化と運用コスト削減を同時に実現します。

ドキュメント群の高度な解析を通じて知の活用を支援するマルチモーダルLLM

株式会社リコーは、複雑な図表を含む文書画像から情報を抽出・解析し、高いカスタマイズ性と低コスト運用に対応するマルチモーダルLLMを開発しています。
プライベートLLMを前提とした小型モデル化や高効率推論にも対応し、APIやライセンス・コンサルティングを通じて多様なビジネス現場での知識活用を支援。
成果のソースコードやモデル、開発ノウハウも公開し、基盤モデル開発の進化とコミュニティの情報共有に貢献します。
GENIACコミュニティでの情報発信も積極的に行われ、次世代AIによるナレッジ継承の実現を目指します。

おわりに

今回の記事では、「GENIAC」プロジェクト第3期に採択された企業や研究機関の最先端の取り組みを紹介しました。
AIの社会実装がますます具体化し、長尺映像やBIM、自動運転、創薬、カスタマーサポートなど多岐にわたる分野で、実用化を見据えた独自モデルの開発が進んでいます。
各プロジェクトは国内ビジネスや産業の競争力向上に貢献するだけでなく、オープンな成果物やノウハウの共有を通じて日本発の技術イノベーションを世界へ発信するポテンシャルを秘めています。
今後もGENIACからどのような新しいAI基盤モデルや応用が生まれるのか、引き続き注目していきたいですね。

これまでの「GENIAC」プロジェクトの取り組みについては、以下の記事でもご覧いただけます。

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引用

https://www.meti.go.jp/press/2025/07/20250715001/20250715001.html

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